社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~65
2026/01/15
当局の情報では「調査においては、贈与の前後における当該贈与財産の管理及び運用の状況、当該受贈財産から生じる利益の受領状況等を確認することはもちろん、別件の訴訟における納税者の主張及びその証拠がどのようなものであるかを確認することも重要である。」とあります。これらに係る証拠力が高いと認定されうる証拠を検証します。
○調査に生かす判決情報~判決(判決速報№1500【贈与税】)の紹介
~判決言渡日、令和元年7月3日、判決結果、国側勝訴(相手側が上告受理申立てしたため未確定)
《ポイント》
加算税を賦課しない「正当な理由」があると認められる場合とは?
~別件の訴訟で贈与の効力が争われていたケース~
事件の概要
1 X(納税者)は、平成26年9月にA(Xの父)から甲会社(非上場会社)の株式の贈与(以下「本件贈与」という。)を受けたが、Aは、同年12月、本件贈与はしていないなどと主張して、Aが当該株式の株主であることの確認を求める訴訟(以下「別件訴訟」という。)を東京地方裁判所に提起した。
2 東京地方裁判所は、平成28年2月、本件贈与が有効に成立した認定し、Aの請求を棄却する判決を言い渡した(確定)。
3 Xは、平成28年6月に本件贈与について平成26年分の贈与税の期限後申告をした。
4 Y(課税庁)は、Xに対して平成26年分の贈与税に係る無申告加算税(5%)の賦課決定処分をした。
5 Xは、法廷申告期限内に申告をしなかったのは、本件贈与の有効性が裁判で争われていた等の事情によるものであるから国税通則法(以下「通則法」という。)66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に当たると主張して、上記4の処分の取消しを求めて本訴を提起した。
本件の争点
Xが法定申告期限内に贈与税の申告書を提出しなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に当たるか否か。
裁判所の判断
1 「正当な理由があると認められる場合」の意義
本判決では、通則法66条1項ただし書きに規定する「正当な理由があると認められる場合」の意義について以下のとおり判示した。通則法66条が定める無申告加算税は、申告納税方式による国税に関して、法定申告期限を遵守して申告をした者とこれをしなかった者との間に生ずる不公平を是正するとともに、申告義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置と解される。かかる無申告加算税の趣旨に照らせば、期限内申告書の提出がなかったとしても例外的に無申告加算税が課されていない場合として通則法66条1項ただし書が定めた「正当な理由があると認められる場合」とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課すること不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。(過少申告加算税に関する判例であるが、最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決)。
裁判所の判断
本判決は、「正当な理由があると認められる場合」を上記1のとおり解した上で、本件において当該規範が当てはまるか否かについて、次のとおり判断している。国税訟務官室からのコメント
1 期限内申告書の提出がなかったことの「正当な理由」と主張立証責任について
通則法66条1項ただし書きに規定する「正当な理由」とは、期限内に申告書を提出しなかったことについて真にやむを得ない事由がある場合というものと解され、本判決も、「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、(中略)納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である」としている。
なお、無申告加算税は、納税者が法定申告期限内に申告書を提出しない場合に原則として課されるものであり、「正当な理由」が存在すると認められる場合、例外的に無申告加算税を課さないとするための要件であるから、加算税を免れようとする納税義務者の側にそれが存在することの主張立証責任があると解されている20。
2 本件贈与の状況について
本件贈与は、平成26年9月の甲会社の株主総会に続く席上において、Aから甲会社株式をXに贈与することの意思表示がされ、これを受けるXの意思が合致したことにより、贈与契約が成立したものである。なお、甲会社は株券発行会社であるが、設立当初から株券を発行していなかったことから、AからXへの株式の贈与は、意思表示のみで効力が生じたものである(Xは、別件訴訟において、これらの事実等を根拠に本件贈与は有効に成立していると主張して争っていた。)。
3 裁判所の判断ポイント
裁判所は、本件におけるXの主張は、結局のところ、贈与者であるAから贈与の不存在を理由に別件訴訟を提起されたというにすぎないものであり、「本件贈与が無効であるか又は有効である可能性が小さいこと」を「客観的に裏付けるに足りる事実」はないと認定した(前記「裁判所の認定判断」の1)。
